『バックカントリーの時、いつもゲレンデで着てるウェアじゃだめ?』
だめじゃないですが、不快かつ危険です。
ゲレンデ滑走と、ヘリやモービルを使わない一般的なバックカントリーとの大きな違いのひとつは登りがあること。
バックカントリー用語では この登りのことを”ハイクアップ” と言います。
初心者の方が意外と想像できないのが、バックカントリーのハイクアップでは大量の汗をかくこと。
『寒い雪山で汗?』 なんて思うかもしれませんが、かくんです。
雪山で汗をかくとどうなるか。
気温によって汗が冷え、体を冷やし、最悪の場合は低体温症などを引き起こし死につながることもあります。
バックカントリーには、バックカントリーに適した快適で危険を回避しやすいウェアがあるんです。
基本的にはレイヤリングと言って、機能の異なるウェアを重ね着することによってハイクアップ時の発汗や、活動量が少ないときの冷え、雨や雪、風などの外部から影響に対応します。
ここでは、初心者の方が揃えていくと良い順番でレイヤリングに必要なウェアをご紹介していきます。
ベースレイヤー
まずはベースレイヤー。肌の上に直接着る肌着です。
アウターウェアほど高額ではないので、バックカントリー用のウェアをそろえていくにあたりまずはベースレイヤーをきちんとしましょう。
ベースレイヤーには吸汗蒸散性の高いウェア、つまり素早く汗を吸って拡散し蒸発させてくれるウェアを使用してください。
綿やレーヨンでできた肌着は禁物。なかなか汗がかわかず水分のままとどまり体を冷やします。
ゲレンデで滑るときに吸汗蒸散性の高い速乾ベースレイヤーを着ている人はそのまま流用できます。
購入をするのであれば、おすすめはファイントラックのメリノスピン。
その名の通りメリノウール素材の肌着です。
以下の様な特徴があり、本当におすすめです。
・メリノウールの快適性
・メリノウールなのに驚きの速乾性
・動きやすくフィット感が抜群
・連日着用でもにおいを抑制
・イージーケアで繰り返しの洗濯でもヘタリにくい
靴下
ハイクアップで高度を上げ、風にさらされる極寒の条件で足が冷たいと本当につらい。
靴下も肌着と同じ様に、吸汗蒸散性の高い靴下を着用してください。
スキー用、スノーボード用のソックスであればもともとそういったものも多いのでそのまま流用で問題ないと思いますが、より快適さを求めるのであれば同じくファイントラックの靴下がおすすめです。
この靴下は吸汗蒸散性が高いだけでなく本当にくさくなりにくい!
僕自身はゲレンデでもバックカントリーでも愛用しており、2日続けて履くこともよくあります^_^;
洗ってもすぐ乾くので遠征や旅行での利用にもおすすめです。
ミドルレイヤー
ミドルレイヤーとは、肌着とアウターの間にきる中間着のことです。
ベースレイヤーは、動きやすく吸汗性を高めるためぴったりと体にフィットするよう薄手のものが多いです。そのため保温性はそこまでありません。
ミドルレイヤーを着用して保温性を高めます。
選ぶときのポイントは、
・ぶあつすぎないこと
→保温性が高すぎるものはハイクアップの際に汗をかきます。また、ハイクアップや滑走の時に動きにくい。
・通気性があること
→通気性があったら寒いじゃんと思うかもしれませんが、ミドルレイヤーでは汗の放出のため通気性が必要です。外気の遮断はアウターウェアで行います。
・軽いこと
→ハイクアップで楽をしたいなら、ウェアも含めて持ち物をとにかく軽くすること。少しでも重量が増えると本当にしんどいです。
・体温の調整がしやすいこと
→バックカントリー初心者の方には信じられないかもしれませんが、ハイクアップでは本当に熱くなるんです。春山なら雪が残る中、Tシャツ1枚で歩いている人も珍しくないぐらいです。
ハイクアップで体温が上がった際に、すばやくチャックを開けるなどして体温の調節ができるものがおすすめです。
具体的には軽くて暖かいフリースがおすすめです。
ただし、安物のフリースは吸汗性がなくせっかくベースレイヤーで吸い上げてくれた汗がうまく蒸散してくれません。
アウトドアメーカーから発売されている登山やアクティビティ用のフリースが良いです。
ハイクアップ用のグローブ
これまで紹介した、ベースレイヤー、靴下、ミドルレイヤーは、一般のスキー、スノーボード用でも吸汗蒸散性のあるものならもちろん流用できます。新しく買う必要はありません。
グローブについては、普段ゲレンデで使っているぶあつい物とは別に薄手のグローブをハイクアップ用あるいは作業用として必要です。
雪山での活動中は極力グローブを外さないようにしなければなりませんが、厚手のグローブだけではハイクで暑すぎるだけでなく、バックパックのジッパーの開閉や、ゴーグルやサングラスの着脱、食事、モードチェンジの際の板やバインディングの取り扱い、シールの着脱がうまくできずグローブを外すことになります。
ハイクアップ、あるいはモードチェンジなどの細かな作業が必要な際にも肌を出さなくて済むように薄手で作業性の高いものを揃えてください。
ハイク用のグローブは、以下の機能があるものにしてください。
・防水・防風性
→雪や風などから手を守り、冷えを防ぎます。
・耐久性
→耐久性のないものはモードチェンジなどですぐに指先がやぶれます。
・作業性
→外気から手を守りながらも、極力薄手の方が様々な作業がしやすいです。ミトンタイプは作業がしにくいため5本指タイプが良いです。
たまに軍手を使っている人がいますが、極力やめた方が良いです。雪がつくと濡れ、風が通るため冷えから手を守ることができません。
ハイク用としておすすめのグローブはこちら。
滑走用グローブ
ゲレンデで使っているもので流用できます。
ただし、滑走中にもなんらかの作業が必要となることが多々あるのでミトンよりは5本指タイプが良いでしょう。
中にインナーグローブが着用できるグローブなら、滑走時にもアウターグローブのみ外して作業ができます。
アウターウェア
予算の都合がつけばアウターウェアもバックカントリーに適したものを着用しましょう。
基本的にはゴアテックス、あるいはそれに準じた防水透湿性をもつ素材でできた中綿なしの一枚地です。
極寒の場合には終始アウターを着用したままのことももちろんありますが、天気の良い日や気温の高い日にはハイクアップ時にアウターを脱ぐことも多々あります。
そんな時に、中綿有りのぶあついアウターウェアは重くかさばりとても邪魔になります。
保温はミドルレイヤーにまかせ、アウターウェアに求める性能は防水透湿性にしぼって、薄くてかさばらない一枚地の軽いものが良いです。
ただし、防水性だけがあればよいのではなく、汗を拡散させるための透湿性が必要となります。アウターウェア内で汗がこもると結露して体を冷やすためです。
防水性だけであればビニール製の雨がっぱでもかまわないのですが、透湿性も併せ持つとなるとゴアテックスなどの高機能素材を使用している必要があります。
色は派手なものがおすすめ。仲間同士で居場所の確認がしやすく、万が一の際にも発見されやすいです。
そして、写真のピントも合いやすい! 良い写真をとってもらうなら赤や黄色系がおすすめですよ。
ダウンジャケット
休憩時など長めの時間じっとして動かない時の保温用としてバックパックに入れておきたいのがダウンジャケット。
アウターの上からはおって体温が下がるのを防ぎます。
素材はダウンでなければならないわけではないのですが、軽くてかさばらず暖かいという点で最も一般的なのがダウンです。
ダウンジャケットは濡れに弱い特徴があるので、新しく購入するのであればアウトドア用の濡れに強いものを選びましょう。
濡れに強いとうたっているダウンジャケットは、表面生地に撥水性をもたせてあったり、羽毛に防水処理をしてあります。